メッセージ。 - フリーの日本語OCRソフトかぁ。

# フリーの日本語OCRソフトかぁ。

Googleが試験公開しているフリーの日本語OCRソフトが、はてブでホットエントリーに入っててすごい人気。でも、そんなにみんなが期待するほど、OCRって使い物になるんだろうか? 自分、大学では文字認識の研究をやってたんすけど。OCR技術は、郵便番号の認識みたいな「枠の中に数字のコードが必ず書いてある」みたいな状況ではすごく役に立つけど、汎用的なものにしようとすると、途端に価値が下がるように思う。

たとえば、文字が縦書きか横書きか、フォントサイズは一定か不変か、書いてある内容は自然文かそれとも電話番号のようなコードか、誤認識はうまくフォローできるのか(どれくらい誤認識が許されるのか)等によって価値が全然違ってくるだろう。

そして、OCRがビジネスや日常の道具として損益分岐点の上に行くようなスイートスポットは、残念ながらとても小さい。文字認識の研究をやられていた先生も、懇親会の席でこんなことをおっしゃっていた。「文字認識の市場規模は残念ながら小さい。似た技術を使っているのに、バーコードのほうがビジネスとして断然上を行っている」。10年以上前の話だが、状況はそう変わっていないだろう。

バーコードは、誤りの検出と訂正機能を備え、意味論の集合を事前に定義したうえで個々の意味を二次元の印刷物やディスプレイにコード化(読み書きが可逆的に可能な状態に)することで、有用性を確保できている。一方で文字認識は、文字認識技術それだけでは意味論の抽出が不可能なので、認識結果を機械に処理させたり、意味を抽出したりするためには、人間が密にサポートするか、事前の強いコード化が欠かせない。

フリーのOCRソフトやライブラリは、あればあったに越したことはないだろうけど。でも、それが「役に立つ」といえるレベルに持っていくのは難しいだろうなぁと思う。やるとすれば、コードの意味論をかなり限定的に定められる分野か、たくさんのデータを処理できるようなスケールメリットのある分野に適用するといった使い方だろう。ぱっと思い付くところでは、学力テストをマーク式から手書きにできるとか、本をスキャンしてその内容をテキストデータで提供できるとかそういう使い方。

そういう意味では、使い道はあるにはあるんだけど。ただ、そういう場合は大きな案件で使うことになるし、大きな案件ならばアカデミックな研究成果の盛り込まれた商用のOCRライブラリを使うという選択肢もある。普通の人がこんなにたくさんはてブにメモするほど身近なライブラリには、(少なくともあと3~5年ぐらいは)ならないんじゃないかと思う。
2008-09-13 00:41:48 / ふじさわ / Comment: 0 / Trackback: 0

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