メッセージ。 - 撤退戦

# 撤退戦

最近、人と話してるときとかに口にしている言葉:「撤退戦」。

たとえば友達の弟が、もともとは勤めている会社で技術職だったのだけど、この不景気でリストラが進められて営業職に異動になって悩んでいるというような話を聞く。転職したほうがいいんだろうか、とか。仕事がうまくこなせない、とか。

そういうときに「撤退戦」という言葉で、ちょっとアドバイスというか、思っていることを言いたくなる。それは、日本がここ20年ほど、「撤退戦」を戦っているということだ。

20年前のその前、日本は40年ほど、高度成長期などといって戦線を拡大していた。その時期には、どんな産業にあったとしても大かれ少なかれビジネスはうまくいき、平均以下の能力を持った人でも、仕事をすれば成功することも多かった。相場が上昇基調にあったからだ。その40年を知っている人(少なくともその一部)は、仕事やビジネスというものを、拡大戦線のイメージで捉えている。つまり彼らは、撤退の仕方を知らない。

だからどうしても、戦線を拡大するやり方で、この撤退戦を戦おうとしてしまう。売上が落ちてきたら、キャンペーンを打ったり、新規事業に投資したりして売上を補おうとする。売上を拡大しようとする。しかし多分、そういったやり方は、なかなかうまくいかないのではないか。

いまの時代、売上が下がるのは仕方ないと考えたほうがよいのかもしれない。無理に売り上げを大きくするのではなく、下がり続ける売上でどう利益を確保するか。どのように守るかが重要なのではないかと思う。もちろん、必要な投資はしたほうがよい。しかし、昔と比べると投資も難しくなっている。昔ならうまくいったような投資が、今では回収できなくなっている。

まぁ、投資というのはそもそも失敗しがちで、エジソンの発明のように「うまくいかない方法を100個も見つけた」というように積み重ねるものでもあるのだろうけど。ただ、なんというのかなぁ、いまは環境が厳しいので、精度を高めたり、最大限コストを抑えながら投資することが大事なんじゃないかなぁ、と。少なくとも、いままでのようなジャブジャブの投資はやめたほうがよいだろうと思う。

冒頭の、友達の弟さんの話に戻ると、そのときは、「まぁ難しいけど、いま日本が撤退戦にあることをちょっと意識してみてもいいんじゃないかな」みたいな話をした。ぼくも過去、いくつか会社を転職した。転職するときは、「この会社はもう駄目なんじゃないか」と感じたこともあった。でも、転職して数年たって振り返って見てみると、あのときの会社は案外元気にやっていたりする。社員数が順調に増えていたり、新製品を発表していたり。だから案外、会社というのは潰れないものだということを、後を歩く人には言いたい。

そしてもう1つ、技術職から営業職に異動になって難しいというような問題については、あまり悩みすぎないように、ってことかな。いまは撤退戦にあるのだから、そもそも「仕事はうまくいかない時期にあるのだ」と考えよう。悩んでいるのはあなただけじゃない。いまの時代は、みんなが「仕事がうまくいかない」と悩んでいる。うまくいかなくて普通なんだ。平均点が「前年比マイナス5%ぐらいなんだ」って。そのうえで、技術職から営業職に変わったことを、ポジティブに捉えることもできるのではないかと思う。

会社はあなたをクビにしなかったのだから。クビにする代わりに彼らは、あなたを異動させた。彼らはあなたに可能性を感じているし、なんらかの良い結果が起こる*かもしれない*と考えてそのような試みをしているのだろう。だからあなたは、そこで自分のできることを試してみればよいのではないかと思う。どうせ今は、前年比マイナス5%ぐらいの時代。良い結果を出せなくても悩みすぎずに、ちょっと視点を変えるつもりで、与えられた仕事にあたってみてはどうだろうか。

転職も悪くはないけど、転職したからといっていまの時代、新しい会社の元気が良いとは限らない。やっぱり新しい会社も、前年比マイナス5%ぐらいで苦しんでいる場合も多いだろう。だから転職も、なかなか難しい。どこにいたって、前年比5%プラスぐらいにするのは難しいのだ。だったら現状をあまり悩みすぎずに、「マイナスで当たり前だよね」ぐらいに考えたほうがいい。やがてときがくれば、流れも変わる。そのときまで、いろいろ勉強して力を貯めるとか、長期的に考えて自分がやるべきだと思うことに力を入れるとか、すればよいのではないかと思うのだ。
2010-01-23 23:42:30 / ふじさわ / Comment: 0 / Trackback: 0

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