メッセージ。 - 社会保障のありかた

# 社会保障のありかた

テレビの話。ちょっと前にNHKスペシャルの『揺れる大国 プーチンのロシア』という番組を見た。

揺れる大国 プーチンのロシア 失われし人々の祈り ~膨張するロシア正教~

いまロシアでは、ロシア正教の力が強まっているらしい。市場主義による競争が持ち込まれた結果、多くの人が失業者になったり、身寄りも貯蓄ないお年寄りが孤立したりしている。そういったなかで、宗教に頼る人たちが増えているというのだ。

教会では、困った人たちを助けるボランティアのネットワークが根を伸ばしている。ボランティアの事務所には、身寄りのないお年寄りからひっきりなしに電話が入る。「老齢で体が動かず、食事や掃除が満足にできません。助けてほしい」、そういった声だ。社会主義体制下でサポートされていた年金や医療費などは、現在では十分機能しておらず、貧しい人たちを直撃しているとのこと。そういった状況を救おうとしているのが、草の根ベースのボランティアだ。

ボランティアは、ロシア正教を精神的な支えとして、民間人たちが互いに助けあう形で運営されている。ソビエト時代は宗教が否定されていたため、みな昔からの教徒というわけではない。そのため、ボランティア活動に参加している人たちも、サービスを受けている人たちも、ロシア正教への態度はまちまちだ。貧困のなか救いを求め聖書にすがる妻と、元科学者で無神論者の夫のあいだには、ギクシャクした空気がたちこめる。人々のあいだに貧困が忍び寄った結果、彼らは混乱し、どうしようもない状況のなかで宗教に救いを求めている。

ロビエト時代に否定されていたロシア正教だが、逆にプーチン政権下では手厚い保護を受けている。もともとロシア帝政と共同歩調を取っていたロシア正教は、プーチン政権下でも当時とおなじように政権との結び付きを強くしようとしているのだ。その力が、ボランティアなど社会保障面で機能するぶんにはいいことだとおもうが、一方で孤児を兵隊に育て、愛国軍として組織しようとしている一部の教会もあるという。

と、そういう内容だった。この番組はシリーズ化されていて、あと2回「プーチンのロシア」として番組が予定されているのでぜひ見てみたい。興味深い内容だった。ところで、番組を見たあとで日本を振り返っておもったのだけど、日本には同じようなボランティアネットワークが少なく、貧困層を助けてくれる力が足りないのではないか。ちょっと前、「セーフティネット・クライシス」の感想で書いたように、日本の人たちは精神的にすごく孤立している。家族は信頼するけど、それ以外に信頼できる関係性があまりない。

親友は家族と同等に信頼できる存在かもしれない。でも親友はいたとしても1人とか2人とかで、しかもほとんどのケースで、彼らに経済的援助を期待することは困難なのではないか。…いや、分からない。一般的には、そうではないのかもしれない。最後の最後には、そういう状況では親友に助けを請うのかもしれない。ただ、ここで言いたいのは、そういった社会保障といったものが、日本では政府によってしかサポートされておらず、しかも国民と政治運営者のあいだに、格段の信頼関係が存在していないのではないかということだ。

とくに貧困な状況にいる人は、社会から阻害されたと感じているだろう。自分たちを社会における弱者だと見なしていて、社会は敵だと考えていのではないか。もしそうなら、その社会から施しを受けることに抵抗を感じ、心を許すことが難しかったとしても自然だろう。なにより現状の「政府による社会保障」には、精神的サポートや、なぜ保障を行うかといったメッセージが存在しない。こういった構図を考えれば、社会保障を政府が直接かつ全面的に請け負うよりも、宗教や地域といった第三者による社会保障のほうが適切である可能性が高いのではないか。そうすれば、金銭面だけでなく、精神面でも困った人をサポートできるし、彼らに居場所を与えることができるのではないか。そんなことをおもった。
2009-03-08 11:29:32 / ふじさわ / Comment: 0 / Trackback: 0

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