メッセージ。 - にゃー
# にゃー
これからカメラを初める人に単焦点レンズを勧めるのはいかがなものかと喧嘩腰で主張している人を見た。その人曰く、単焦点レンズなんてお金の無駄で、ズームレンズのほうがいくつも単焦点レンズを持つようなものだから、結局単焦点を買わないで最初から大三元のズームレンズを買ったほうが良いということだった。
個人的にあまり賛同できない。ぼくは単焦点が好きだから意見は偏ってしまうけれども、初心者にズームレンズ(とくに大三元)を勧めるのにはいくつか問題があると思う。ポイントは画角、明るさ(最小F値)、重量・大きさ、価格ぐらいかな。
1. 画角について
たとえば24-70mmとかのズームレンズはたしかに便利だけれども、初心者に使いこなすのは難しい。初心者には「こういう画を撮りたいからこの画角」という感覚がないので、適切にズームできない。初心者の行動原理はこうだ。(1)撮りたい被写体を見つける、(2)立ち止まってカメラを被写体に向ける、(3)ファインダー内で被写体がちょうど良い大きさになるようズームしてシャッターを切る。
これでは面白い写真が撮れない。だって、写真を面白くするにはいろんな角度から被写体を見て、これだと思う構図を見つけなければいけないから。光が来ている方向を確認し、逆光で撮るのか斜光で撮るのか順光で撮るのか、背景はどうするのか、何を構図に入れて何を入れないのか、どこをどれくらいボカすのか、パースをどれくらい効かせたいのかを判断して写真は面白くなる。
だからズームレンズを使うにせよ単焦点レンズを使うにせよ足を使わなければならない。でも初心者はその感覚がないからズームレンズを持つと単にフレーム内に大きく被写体を入れることだけにズーム機能を使用してしまって、後から見返してつまらない写真にがっかりしてしまう。
単焦点レンズだとフレーム内に大きく被写体を入れるためだけに否が応でも足を使う必要があるので、「足を使わないといけないんだな」という基本が身に付くし、足を使っているうちに「いろんな角度から見てみる」というコツに気付く可能性が高まる。
2. 明るさ(最小F値)について
単焦点レンズはたいていズームレンズより明るい(最小F値が小さい)。だから開放(最小F値)で撮ると背景がボケて「おおっ」という写真が撮れて楽しい。ズームではこうはいかないというか、ズームでも望遠端を使って被写体に寄れば十分背景がボケるけれども、初心者にはそういう発想が浮かばないのでその楽しさに辿り着けないと思う。
それに室内や夜間という条件で写真を撮るとき、レンズは明るいに越したことはない。そういう条件では、F値はできるだけ1.8〜2.8ぐらいまでの明るさで撮りたいが、そうなるとズームレンズでは厳しい。キットズームはF3.5始まりだし、F2.8始まりの明るいズームレンズは大三元のように大きく重くなってしまうので初心者にはしんどい。
最近のフルサイズ機であれば高感度耐性も高くなっているからF値が3.5以上のキットズームでもISO感度を上げればいいじゃんという考え方もあるが、フルサイズ機になるとカメラ本体が大きくて重くなりがちなので初心者が気軽に使いにくい。
いや、α7CやLumix S9のような例外的に軽量な機材を使えばこの問題は起きないけど、これらの機材は特殊な例というか。この方針で勧めるのなら、「初心者はズームレンズを買え。ただし軽量なフルサイズカメラを使っている場合に限る」と大きな注意書きをしないとユーザーのためにならないと思う。
「開放で背景をボカして撮るのではなく、絞って背景もきっちり写したほうがいい」という意見もあるが、これは玄人だから言えるものだと思う。ほとんどの初心者には大きくボケた写真のほうが「プロみたい」と感動が大きいし、経験を積まないと背景まできっちり写った写真の良さに気付きにくい。まずは背景をボカして楽しみながら、徐々に絞ることも覚えればいい。
3. 重量・大きさ
2とも重なるけど、初心者にとって大きくて重いカメラ・レンズは持ち出すのが億劫になるから個人的にお勧めしない。もちろん撮りたい写真のジャンルによってはフルサイズや超望遠ズームやマクロレンズや三脚やストロボが必須になるので、携帯性は二の次になることもあるけど。
ただ、初めてカメラを買う人のほとんどは子供が生まれたからとか、海外旅行に行くからとか、何となくかっこいい写真が撮りたいとかいった理由でカメラを買うことになると思うので、大仰なカメラでは使いにくいはずだ。普段使っているカバンにひょいと入れて気軽に持ち運べるようにと考えると、APS-Cと単焦点レンズ、もしくはそれに準ずるような小さいカメラとレンズの組み合わせが良いと思う。
どんなに良いカメラも手元になければ写真を撮ることはできない。どこにでも連れていけるという「性能」は、他のどんな性能にも増して価値がある。
4. 価格
3にも関連するけど、初心者はあまりカメラにお金を出せない。個人的な感覚だとレンズ込みで10万円ぐらいに抑えたい。だって本当に使うかも分からないし、10万というのは十分大金だ。そうなるとAPS-Cとキットズームぐらいしか買える選択肢がなく、キットズームの代わりとか、2本目に背伸びして単焦点レンズを買うぐらいが関の山だ。
そういう諸々を考えると、フルサイズ換算で35mm F2とか(APS-Cだと23mmF1.8程度)の単焦点レンズを買って試してみるのが一番良いと思う。結局のところ、カメラというのは触って写真を撮ってみないと分からない。まずはカメラとレンズを買ってみて、撮ってみて、「もうちょっとこうしたい」という気持ちが出てきたらレンズを買い足すなり買いかえるなりするしかないし、そうするのが楽しい。「最初からズームレンズを一本買っとけばいい」なんてのは幻想で、楽しいと感じたらいろいろ試したくなるし機材も欲しくなるのだ。プロだったら一直線に必要最小限の機材に辿り着くのが正解だろうけど、紆余曲折を楽しむことも含めて趣味だと思う。
でも始めるにあたって大金を払ったぶん楽しめるか不安だったり失敗をしたくないという気持ちはよく分かる。そういう人には普段持ち歩いて苦にならないぐらいの重量・大きさの(できるだけ安い)カメラに明るめの単焦点レンズを付けてまずは試してみるのがいいのではないかと個人的に思う。
個人的にあまり賛同できない。ぼくは単焦点が好きだから意見は偏ってしまうけれども、初心者にズームレンズ(とくに大三元)を勧めるのにはいくつか問題があると思う。ポイントは画角、明るさ(最小F値)、重量・大きさ、価格ぐらいかな。
1. 画角について
たとえば24-70mmとかのズームレンズはたしかに便利だけれども、初心者に使いこなすのは難しい。初心者には「こういう画を撮りたいからこの画角」という感覚がないので、適切にズームできない。初心者の行動原理はこうだ。(1)撮りたい被写体を見つける、(2)立ち止まってカメラを被写体に向ける、(3)ファインダー内で被写体がちょうど良い大きさになるようズームしてシャッターを切る。
これでは面白い写真が撮れない。だって、写真を面白くするにはいろんな角度から被写体を見て、これだと思う構図を見つけなければいけないから。光が来ている方向を確認し、逆光で撮るのか斜光で撮るのか順光で撮るのか、背景はどうするのか、何を構図に入れて何を入れないのか、どこをどれくらいボカすのか、パースをどれくらい効かせたいのかを判断して写真は面白くなる。
だからズームレンズを使うにせよ単焦点レンズを使うにせよ足を使わなければならない。でも初心者はその感覚がないからズームレンズを持つと単にフレーム内に大きく被写体を入れることだけにズーム機能を使用してしまって、後から見返してつまらない写真にがっかりしてしまう。
単焦点レンズだとフレーム内に大きく被写体を入れるためだけに否が応でも足を使う必要があるので、「足を使わないといけないんだな」という基本が身に付くし、足を使っているうちに「いろんな角度から見てみる」というコツに気付く可能性が高まる。
2. 明るさ(最小F値)について
単焦点レンズはたいていズームレンズより明るい(最小F値が小さい)。だから開放(最小F値)で撮ると背景がボケて「おおっ」という写真が撮れて楽しい。ズームではこうはいかないというか、ズームでも望遠端を使って被写体に寄れば十分背景がボケるけれども、初心者にはそういう発想が浮かばないのでその楽しさに辿り着けないと思う。
それに室内や夜間という条件で写真を撮るとき、レンズは明るいに越したことはない。そういう条件では、F値はできるだけ1.8〜2.8ぐらいまでの明るさで撮りたいが、そうなるとズームレンズでは厳しい。キットズームはF3.5始まりだし、F2.8始まりの明るいズームレンズは大三元のように大きく重くなってしまうので初心者にはしんどい。
最近のフルサイズ機であれば高感度耐性も高くなっているからF値が3.5以上のキットズームでもISO感度を上げればいいじゃんという考え方もあるが、フルサイズ機になるとカメラ本体が大きくて重くなりがちなので初心者が気軽に使いにくい。
いや、α7CやLumix S9のような例外的に軽量な機材を使えばこの問題は起きないけど、これらの機材は特殊な例というか。この方針で勧めるのなら、「初心者はズームレンズを買え。ただし軽量なフルサイズカメラを使っている場合に限る」と大きな注意書きをしないとユーザーのためにならないと思う。
「開放で背景をボカして撮るのではなく、絞って背景もきっちり写したほうがいい」という意見もあるが、これは玄人だから言えるものだと思う。ほとんどの初心者には大きくボケた写真のほうが「プロみたい」と感動が大きいし、経験を積まないと背景まできっちり写った写真の良さに気付きにくい。まずは背景をボカして楽しみながら、徐々に絞ることも覚えればいい。
3. 重量・大きさ
2とも重なるけど、初心者にとって大きくて重いカメラ・レンズは持ち出すのが億劫になるから個人的にお勧めしない。もちろん撮りたい写真のジャンルによってはフルサイズや超望遠ズームやマクロレンズや三脚やストロボが必須になるので、携帯性は二の次になることもあるけど。
ただ、初めてカメラを買う人のほとんどは子供が生まれたからとか、海外旅行に行くからとか、何となくかっこいい写真が撮りたいとかいった理由でカメラを買うことになると思うので、大仰なカメラでは使いにくいはずだ。普段使っているカバンにひょいと入れて気軽に持ち運べるようにと考えると、APS-Cと単焦点レンズ、もしくはそれに準ずるような小さいカメラとレンズの組み合わせが良いと思う。
どんなに良いカメラも手元になければ写真を撮ることはできない。どこにでも連れていけるという「性能」は、他のどんな性能にも増して価値がある。
4. 価格
3にも関連するけど、初心者はあまりカメラにお金を出せない。個人的な感覚だとレンズ込みで10万円ぐらいに抑えたい。だって本当に使うかも分からないし、10万というのは十分大金だ。そうなるとAPS-Cとキットズームぐらいしか買える選択肢がなく、キットズームの代わりとか、2本目に背伸びして単焦点レンズを買うぐらいが関の山だ。
そういう諸々を考えると、フルサイズ換算で35mm F2とか(APS-Cだと23mmF1.8程度)の単焦点レンズを買って試してみるのが一番良いと思う。結局のところ、カメラというのは触って写真を撮ってみないと分からない。まずはカメラとレンズを買ってみて、撮ってみて、「もうちょっとこうしたい」という気持ちが出てきたらレンズを買い足すなり買いかえるなりするしかないし、そうするのが楽しい。「最初からズームレンズを一本買っとけばいい」なんてのは幻想で、楽しいと感じたらいろいろ試したくなるし機材も欲しくなるのだ。プロだったら一直線に必要最小限の機材に辿り着くのが正解だろうけど、紆余曲折を楽しむことも含めて趣味だと思う。
でも始めるにあたって大金を払ったぶん楽しめるか不安だったり失敗をしたくないという気持ちはよく分かる。そういう人には普段持ち歩いて苦にならないぐらいの重量・大きさの(できるだけ安い)カメラに明るめの単焦点レンズを付けてまずは試してみるのがいいのではないかと個人的に思う。
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