メッセージ。 - SI業界と多重請け負い
# SI業界と多重請け負い
MyNewsJapan NTTデータが偽装請負 直接指示どころか下請け富士ソフト社員を奴隷扱い、指摘後も対応せず
奴隷扱いをうけた飛田さんは可哀想だと思うけど、SI業界ではこのくらいの扱いが普通なんですよね。むしろ、このような形で抗議するのは、業界ではモラルに反するようにさえ感じてしまいます。
なんというか、「道路を制限速度ちょうどで走る人は迷惑」みたいな、そんな感じ。この国では、法律よりも運用が優先されていて、ここで挙げられている多重請け負いも、一般的なIT業界の運用や慣習からそう外れているわけじゃないんですよね。
だから、批判されたNTTデータの人も富士ソフトの人も、「はぁ? じゃあどうすりゃいいのよ」って感じだと思いますよ。「みんなそうしてるし、そうするのが暗黙の了解事項だったはず」って。とくに富士ソフトABCなんて、この業界では劣悪な労働環境で有名な会社です。(記事では「ABC」を省略してるけど、富士ソフトABCですよね?)
# 2006-10-12追記。「富士ソフトABC」は、2006年7月1日に社名を変更して「富士ソフト」になったようです。
また、直接の雇用主である富士ソフトABCに訴えるべきことを、NTTデータが悪いとしてネットに直訴するなんてのも変です。他者に法令を遵守すべきと言うなら、まず自分がそうしなければ。富士ソフトABCの社員として働いているんだから、労働環境に問題があるなら、富士ソフトABCに苦情を言うべき。聞き入れられないなら富士ソフトABCと戦うべきです。なのにそうしないで、こんなところでNTTデータの名前を出したら、名誉毀損が目的と取らざるを得ません。こんな戦い方はやめたほうがいいです。
たしかに、この記事に書かれているT氏の行動は、人間としてどうかと思います。また、NTTデータや富士ソフトABCは法令違反をしていて悪いのかもしれません。でも、本当に悪いのはその二者だけではないのです。業界全体が、ゼネコン構造になっていて法令違反など常態になっているのです。どこでもやっている。だから悪いのは、法令違反を強制しているゼネコン構造か、あるいは多重請け負いを禁止している法律が現実にそぐわないことのはずなんです。どうせやるなら、そっちを問題にしましょうよ。そうでないと、何の解決にもならない。
今回の記事は、私怨から書かれたもののように、ぼくからは見えてしまいます。
奴隷扱いをうけた飛田さんは可哀想だと思うけど、SI業界ではこのくらいの扱いが普通なんですよね。むしろ、このような形で抗議するのは、業界ではモラルに反するようにさえ感じてしまいます。
なんというか、「道路を制限速度ちょうどで走る人は迷惑」みたいな、そんな感じ。この国では、法律よりも運用が優先されていて、ここで挙げられている多重請け負いも、一般的なIT業界の運用や慣習からそう外れているわけじゃないんですよね。
だから、批判されたNTTデータの人も富士ソフトの人も、「はぁ? じゃあどうすりゃいいのよ」って感じだと思いますよ。「みんなそうしてるし、そうするのが暗黙の了解事項だったはず」って。とくに富士ソフトABCなんて、この業界では劣悪な労働環境で有名な会社です。(記事では「ABC」を省略してるけど、富士ソフトABCですよね?)
# 2006-10-12追記。「富士ソフトABC」は、2006年7月1日に社名を変更して「富士ソフト」になったようです。
また、直接の雇用主である富士ソフトABCに訴えるべきことを、NTTデータが悪いとしてネットに直訴するなんてのも変です。他者に法令を遵守すべきと言うなら、まず自分がそうしなければ。富士ソフトABCの社員として働いているんだから、労働環境に問題があるなら、富士ソフトABCに苦情を言うべき。聞き入れられないなら富士ソフトABCと戦うべきです。なのにそうしないで、こんなところでNTTデータの名前を出したら、名誉毀損が目的と取らざるを得ません。こんな戦い方はやめたほうがいいです。
たしかに、この記事に書かれているT氏の行動は、人間としてどうかと思います。また、NTTデータや富士ソフトABCは法令違反をしていて悪いのかもしれません。でも、本当に悪いのはその二者だけではないのです。業界全体が、ゼネコン構造になっていて法令違反など常態になっているのです。どこでもやっている。だから悪いのは、法令違反を強制しているゼネコン構造か、あるいは多重請け負いを禁止している法律が現実にそぐわないことのはずなんです。どうせやるなら、そっちを問題にしましょうよ。そうでないと、何の解決にもならない。
今回の記事は、私怨から書かれたもののように、ぼくからは見えてしまいます。
Comment
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ただ、米国の何でも契約という慣習から見ると奇異に映るのは確か。契約外の作業を要求されたら契約を盾に断るか更新を求めるかが普通なので。あと、「罵られた」「怒鳴られた」は水掛け論になりがちなので、全部記録しておくとか、同僚の証言を文書で取っておくとか。仕事の指示は口頭でなく全部emailか紙にするとか。
# > 他にチャネルが無...
というのは同意です。ただ、今回のケースはMyNewsJapanという公共のニュースサイトに投稿しているのが、ぼくとしては非常にひっかかりました。多くの人に見てもらいたいというのは分かるのですけど、「公共のメディアに投稿するべきか」というのは、もっとよく考えてほしい気がするのですよね。
……というのは、ぼくが公共というものを重く見過ぎなのかもしれませんが。「公共に提供するものは、○○であらねばならない」というような暗黙のプレッシャーが、ぼくの無意識にもへばりついているのを感じます(それが良いか悪いかは別として、日本人的な過度の真面目さといいますか偏りといいますかがありますね、と)。
すみません。脱線しました。話を戻しますが、筋を通すならこの方は、NTTデータなり富士ソフトなりを訴訟して法的に決着を付けるべきだと思うのです。でもこの事例では、法的解決を試みず、いきなりネットの世論に訴えかけているように感じました。
つまり、「世論であるとか、多くの意見がありさえすれば、法なんか無視して社会というものを動かせるでしょう」という意識を感じるのですよね。でもそれって、かなり乱暴なように思います。性急なマスメディアの使用はルールをないがしろにするものですし、話し合いを否定する面があります。
飛田さんが、ご自分のブログなりで書かれていたのなら、ぼくも気にならなかったかもしれません。また、この意見がSI業界に向けて発信されていたなら、もっと納得したと思います。ただ、一般のニュースサイトでこの記事が載るというのは、誤解を招きやすいかなと思った次第です。
2つ上の段落で、性急なマスメディアの使用は危険と書きましたが、日本では法的解決のコストが非常に高く、現実的には個人が泣き寝入りするしかないというのが大多数なのだと思います。また、そういった問題を解決する手段としてマスメディアが有用だというのも分かります。
その一方で、日本人はまだ全然、マスメディアの使い方が上手くないですし、法と行政の機能がそれほどまでに矮小化されてしまうことを危うく感じます。米国の何でも契約という慣習は、1つのケーススタディとして、今後日本でももっと勉強し、良いところは取り入れるべきでしょうね。契約ほとカッチリしたものでなくとも、もっと企業と個人の関係がフラットで、第三者による調停が見込める仕組みが欲しい気がします。
あと、こういった個別の事例がケーススタディになるというのも非常に同意です。記事が公開されたことで、こうやって議論もできました。そういう意味では、この記事には大きな価値があると思います。誤ちを繰り返して、正しい方向を模索できますから。飛田さん程度の誤ちは(それが誤ちだと仮定して)、誰にでもあることだと思いますし、意見が交換できるという意味でもっとじゃんじゃんあってよいと思います。
個人的に、この事例からは、ネットリテラシーとか、ネット時代のルール作りと運用、メディアと公共性といったテーマを考えさせられました。興味深いケースです。
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企業側は今までいいかげんに対応していた部分について改めて見直していかないと泥沼の展開に陥る危険性がある。
企業も労働者もいいかげんであいまいな状態ではいけないという意味では変革の時代なのかも。
# > 企業も労働者もい...
そうですねぇ。難しい時代です。
かっちり法令を遵守し、問題が起こらないように安全マージンを取りすぎたら、それはそれでうまくいかない気がするんですよね。
人間も組織もある程度あいまいな部分がありますし、ときには譲歩しあって、ときには共有しあってうまくいくのかなぁと思ったりしています。
これについてはまだまだ考えがまとまりませんが、いずれにせよ、変革の時代というのは同感です。
コメントありがとうございました。またいつでも、お気軽にどうぞ。
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確かに、「告発した、じゃあその後どうするんだよ、何の対案もなくただ告発っていうなら現場が混乱するだけじゃないか」っていう指摘も尤もだと思うんですけれど、後のことは分からないけどとにかく今この状態をどうにかしたいって追い詰められてしまったら、対案建設よりもとりあえず破壊ってことになるんじゃないでしょうか。
そういう事態を含めて、エグゼクティブの人たちはこれをコストと考えて対策を練った方がいいんじゃないかと思います。忙殺された余裕のない人に策を考えるいとまがあるとは思えないので。
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労働者側が切羽つまっているというのは、確かにその通りなんだと思います。ぼくも昔SEをやっていたときにデスマーチを経験しましたが、本当にしんどかったです。
# デスマーチのしんどさについては、【軍曹が】携帯電話開発の現状【語る】が参考になると思います。もしよければご参考まで。
なんというか、ゼネコン構造における下請けって、本当に奴隷みたいなものなんですよね。とくに、デスマーチになるような酷いプロジェクトだと、体もしんどいですけど、心もしんどくって。失踪する人や、会社を辞める人が続出します。(自殺者も出たりします)
本当につらいので、ああいう酷い現場はなくなってほしいなと思うのですけどね。でも、難しいかなとも思うのです。企業のエグゼクティブにしてみれば、告発を避けるための対策費用を払えるほど、お金の余力がないと思うからです。
いまのゼネコン構造では、何重にも請け負い業者がつらなっていて、それぞれが中間マージンを取るので、利幅が少ないんです。また、顧客の仕様変更が多発することもままあって、その場合に仕様変更で開発コストが増えても、お客さんからSI業者に払われるお金は増えないことが多いです。
そんな風にコストばっかりかかって、どこの会社もカツカツの予算でやっている状況だろうと想像しています。で、カツカツの予算で困窮しているからこそ、酷い条件でもとにかく次の仕事を取らなきゃいけないという悪循環になっていると。
# まぁ、現場の人間に苦労させて、会社の利幅を大きくとっているような会社もあるのだと思いますが。
ぼくは、本質的な問題はゼネコン構造にあると思っています。何層にも下請け業者がつらなって、その間を仕様変更やら仕様追加やらが伝言ゲームで伝わっていくので、悲惨な状況になるのですよね。ゼネコン構造は、コミュニケーションコストが高すぎるわけです。
また、ソフトウェアというのは目に見えないので、とりあえず作ってみないとそれがお客さんを満足させられるかよく分からないところがあります。お客さんだって、システムのプロではないので、「自分がどういうものを欲しいか、実際どんなことが実現可能なのか」なんて、はっきり分からないわけです。そうすると、ソフトの開発にどれくらいコストがかかるか、見積もりなんてできないというのが正直なところです。
しかし、現在のゼネコン構造では、とにかく構造の中にいる人員を食べさせなきゃいけないので、とにかくドンブリ勘定で見積もりを出します。顧客もSI業者も、何をどう作っていいか分からない状態で、契約をしてしまうわけです。もうグチャグチャです。
まぁ、現場が悲惨な状況になるのは、本当はもっといろいろな原因があると思うんですけどね。でも、ここ数年、いろんな本を読んだり、自分の体験をもとに考えたりして、こういった状況になっているんじゃないかとぼくは考えています。
ということで、ゼネコン構造を解消したりできないかなぁというのが、ぼくの願いです。そんな風に伝言ゲームで、しかも言われたとおりに物を作るのって、楽しくないですから。そんなやり方では、役に立つものなんて作れない、ユーザーの顔を直接見ないで、ユーザーの役に立つものが作れるはずないと思っています。
長文になってしまいまして、すみません。間違っているかもしれないですけど、だいたい以上のようなことを考えています。おかしなところは指摘していただけると助かります。また、現場の人間がもっと楽しく気持ちよく働けるよう、みなで協力できればうれしいなぁと思っとります。何かぼくにできそうなことがあれば、いつでも気軽に声をかけていただけるとうれしいです。
#
# ご指摘を受けて気付い...
というのも、ぼくはゼネコン構造を、国が半分加担して作っていると捉えているからです。たとえば、ゼネコン構造の一番親となるのは、NTTデータや富士通、日立製作所、東芝、日本IBMなどのメーカー系大企業です。これらの企業は、主に営業機能を担っていて、実際にモノを作るのは子会社というのが一般的だと思います(富士通ナントカとか、日立ナントカとか)。
親が持つ営業機能で、どういった案件を取ってくるかと言えば、たとえば東証のシステムや水道、電話網、銀行など、大きくて公共的なシステムが中心で、中小規模の案件も、同じように大企業に対して発注されることが多いと思います。土建業界におけるゼネコンもたぶんこんな感じだと思っていて、要は産官が共同してヒエラルキーを作り、護送船団方式で国内市場を動かしているんじゃないかという考えです。
# このイメージはある一面から見て間違っていないと思うんですけど、もしかしたら思い込みがあって、別の側面から見たほうがすっきり説明できるかもしれません。一応ご注意ください。
……そういう風に考えていたので、自由競争についてはまったく抜けていました。ううむ。自由競争かぁ。それを考えるのなら、アメリカはどうなっているのかとか、考えてみる価値がありそうですね。いったん頭をリセットしたほうがよいかもしれないなぁ。
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