メッセージ。 - 日本の経済競争力についての印象

# 日本の経済競争力についての印象

http://pikapika.to/~yf/momoka.cgi?op=readmsg&id=2142#Commentへのお返事です。書いていたら長くなっちゃったので独立した文章にします。あと、書いてたらちょっと反論っぽくなってしまったのだけど、ぼくが書いたもとの文章があまりに情報量不足なので、反論もなにも、議論の土台があやふやすぎる状態だったと考えています。それは、ぼくの元文章がいい加減だったからで、申し訳なかったです。

ということで、この文章は元のエントリのその補足的意味合いで捉えていただけると助かります。

さて、まずは「お米もお肉も、もっと自分ちの庭で作ればいいんだよ」と書いた件についてです。

これは……書き方がまずかったですね。あの文章でぼくが本当に書きたかったのは、「日本に住む個人は、自分の家の庭で米や肉を作れば良いのではないか」という文字通りの意味ではなくて、どちらかといえば「国としてもう少し食料自給率を上げるほうが良いのではないか」という意味でした。

データがないので印象論になってしまいますが、最近では中国や韓国が進出してきて、日本の技術が売れにくくなっていますよね。車はまだ利益を上げることができているけど、家電業界とか、造船業界とか、金属加工とか繊維業界などは、一時期にくらべてだいぶ苦しいんじゃないかと。日本は最近まで技術で食べていられたけれども、技術の(経済的)価値が下がってきているとぼくは考えています*1。

で、(この想像が事実だとすれば)どうすればいいか。ここを考えたい。

そこに対する提案の1つとして、食料自給率を上げることを考えています。要するに、工業製品を製造・販売することで収入される外貨が減っているわけだから、減ったものはしょうがないとして、支出を節約しようというのが主たる考え方です。

というのも、現在の日本は食料の多くを輸入に頼っていますよね。たとえばぼくが小学生のとき、加工貿易とセットになって「減反政策」というのを習いました。日本が現在のように食料を輸入に頼っているのは、貿易不均衡を是正するためのバーター取引としての意味合いが強かったはずなんじゃないでしょうか。

でも、実際には2007年の現在、加工貿易は20年前ほどうまくいっていません。貿易摩擦もほとんどないほど輸出が減っているのに、一方で食料の輸入は昔と変わらず続いている状態なんじゃないかなぁと(念のため、具体的なデータは何もなく想像で言ってるのでご注意を)。

もし上記が正しいとすれば、日本という国は今、収入が減っているのに支出は昔のままという状況だと思うんですよね。とすればとるべき道は2つ。収入を増やすか、それとも支出を抑えるか。

支出を抑える、つまり食料自給率を上げるというのは、理想論というほど難しくないんじゃないかなぁと思っているんですよね。というのも、江戸時代までは国内生産だけで食料を自給できていた実績があるわけですし、最近などは減反政策まで施して生産量を抑えていたわけですから*2。

それに、食料自給率を上げるというのは、地方の活性化につながると思うんです。これも印象論ですが、ぼくから見れば現在、地方というのが主立った生産をしていない。あるいは、地方での仕事(農業や漁業を含む)というものが、どうも軽んじられているように感じます。たとえば若者は、地方での仕事に誇りや希望を持てているのだろうかと。

もし国として「食料自給率を上げなければならない」という目標を立てるなら、地方での仕事に、もっと若い人が誇りや希望を持てると思うんですよね。「自分が必要とされている」という実感を持たせてあげることができる。それはまた、国全体として創造性を高めることにもつながると思うんです。

優秀な才能を持っている者が雑事に手を取られるのは好ましくない、という面は確かにあります。でも創造的な仕事って、机に向かってガリガリやっていれば生産性が上がるというわけでもないと思うんですよね。たとえば息抜きに料理をしてみたり、町を歩いてみたり、子供と話してみたりすることでふとアイデアが浮かぶことってあるでしょう。

本当に理想主義的なんですけど、日常とか暮らしというものは、創造に対してかなり良い影響を持っているとぼくは考えているんですね。たとえば、自然言語処理の研究者である新山さんという人は、「自分で食べるものを自分で料理しない人間を信用しない」と言っています。

そういう感覚って、研究とか創造的な仕事にとっては、けっこう重要じゃないかと思うんですよね。てなところで、ぼくは日常とか暮らしというものを、もっと身近に置くというのは、創造的な仕事にとって悪いアイデアではないと思っとります。

まーそんな感じっすかね。思い込みの強い意見ですし、間違ってるところも多いかとは思いますが、何かの参考になれば幸いです。また、ご意見など聞かせてもらえるとうれしいです。

 *1 ただし、中国などが追い上げてきたことが、すなわち日本の技術の経済的価値を落とすものであることにつながるかは、議論の余地があると最近は思っています。というのも、もともと「世界の工場」の役割を担う者としては、ドイツ、日本が圧倒的に強く、工業生産の得手不得手と国民性を切り離して考えないほうが良いかもしれないと思うからです。ということで、長期的なスパンに立つなら、日本の工業生産・技術というのは捨てたものでもないはずだろうと思います。

 *2 逆に、食料自給率を上げないのだとしたら、何か収入を増やす手段を考えないといけないはず。国は、漫画などのコンテンツを次代競争力として考えているようですが、なかなか難しいですよね……。
2007-02-26 01:41:01 / ふじさわ / Comment: 2 / Trackback: 0

Comment

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前回の記事にコメントさせて頂いた者です。
まず、私が要旨を読み取れなかったことをお詫びし、懇切丁寧な記事を書いて頂いたことを感謝致します。
思索しながらのコメントの為、口調が不遜な感になってしまうこと、ご容赦の程、宜しくお願い致します。


まず、技術の経済的価値の低下。
繊維業界は安い国外労働力・原価競争に押されて衰退の途にある。
但し、残りの分野で衰退が始まっているかと聞かれると、それは大いに疑問だ。自動車や家電は世界でシェアを争える立場を依然としてキープしている。(それも、私の知る限り20年という長期に及んで)
これらハードに付随するソフトウェアやコンテンツ。これらも国外と比較して遜色は無い。海外をターゲットに動いているメーカは数知れない。
過大評価する訳ではないが、国としての産業力を悲観せず分析した場合、日本は経済的に優れた国と評価できるのではないだろうか。
尚、未だに海外輸出の貿易摩擦は存在する。景気向上を謳い円安政策を目論む現在の日銀政策に海外の政治家は決して拍手を打ったりはしない。

また、外貨を獲得出来なければ食料自給率を上げるべきである、というのも(多少)短絡的に思える。加工貿易の影響で減反政策を推進したというのは、ある意味では事実だが、ある意味では正しくない。

貿易緩和政策によって海外から流入する食料に対抗するには余剰を減らすことで価値を一定に保たねばならなかったからだ。特定の食料生産が大幅に増加したとき、原価を保つ為に"廃棄する"理屈と同様であり、勿体無いと時折マスメディアは非難するが、そうしなければ国内生産者は経営を続けることが出来ないという厳然たる現実が、そこにはある。
また、江戸時代まで国内生産で自給を保っていたのは、裏を返せば競合が存在しなかったという単純な理由もある。

自給率を上げようと試みることは「海外から流入する食料輸入産業と裸一貫で喧嘩しろ」と(失礼ながら無策且つ蚊帳の外から)国内生産者に檄を飛ばしているようなものだ。国内各地で付加価値を付けることで必死に打開を図っている彼らにとって、これほど無責任な物言いは無い。

支出を減らす方法は様々だが、国外に無条件で資金と技術力をバラ撒く体質も要因のひとつであると(私個人は)考えている。長期的に見れば、それは収支を減らし、支出の肥大化を招くのは自明の理のように思えてしまう。(中には、どうしてもこれらの発言をキナ臭い方向に話を持って行きたがる御仁もいるが)
何にせよ、収支はセットで考える必要があり、これをしたから安泰になるという唯一つの方法というものは存在しないのではないだろうか?

日常と暮らしは確かに良い影響を及ぼす。
但し、実体験としては二十四時間それに打ち込んでいる者は、大抵の場合、更に良い結果を齎す。もっとも、限度というものはありますが。
研究や創造的な仕事に影響を及ぼす要素は幾つか存在するが、それには「他者や環境に阻害されない」というものが大きく関わってくる。例えばパーティションで作業場所を囲うことは、雇用者が被雇用者のプライバシ尊重というお題目の為に採用しているのではなく、被雇用者の生産力を向上させる効力が現実にあるために採用されている。

もちろん、職場を離れての散歩や子供との会話でアイデアが湧くことも多い。しかし、それらは四六時中「それを考えている」からであり、神懸り的にアイデアが浮かぶということは(少なくとも私には)殆どありません。


…というのが私の意見です。

意見に正しい・間違いというものはない、というのが私の持論です。敢えて反証意見を述べることもありますし、矛盾を抱えた意見を述べることもあります。様々な角度から物事を観察したい、という個人的なエゴでもあることは重々承知しております。

見苦しく、また独善的な意見の一つとして、頭の片隅に留め置いて頂ければ幸いです。
意見を述べる機会を与えて頂き、重ね、ありがとうございました。
2007-02-26 23:29:16 / guest / Comment: 0 / Trackback: 0

# コメントありがとうご...

コメントありがとうございました。意見が対立している部分もありますが、同意する部分もありました。いずれにせよ、だいぶ思考が耕されたように感じています。いただいたコメントに対していろいろお返事をしたい気もあるのですが、いまは勉強不足ゆえ、満足に書けるように思えません。少しずつ勉強しながら、少しずつ考えて、何か発見があれば少しずつ文章にしたいと思います。気が向いたらまたいつでもコメントくださいませ。
2007-02-27 19:51:12 / ふじさわ / Comment: 0 / Trackback: 0
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