メッセージ。 - 昨日会社に行こうと電...

# 昨日会社に行こうと電...

昨日会社に行こうと電車に乗ったら、
小さな珍しい客人がいるのに気付いた。
所在なげに椅子に座っている
茶色いくしゃくしゃのおばあさんだ。
まるで獲物からかくれるリスのような息遣いで、
ゆらゆら視線を揺らして。

電車に乗る人下りる人。
その雑踏の隙間から、きょろきょろきょろきょろ
ホームや駅を覗いている。

「横浜ですよ。どちらに行かれるんですか?」。
いまにも声をかけてしまいそうになる。
ふと手元に目をやると、にぎりしめているおっきな切符。
熱海から川崎まで、か……。
それほど遠い距離じゃない。

ホームから滑り出した電車にアナウンスが流れる。
「次は、川崎。川崎です。」
お婆さんは、ほっと一息ついたけれども、
またすぐ不安気に、車窓の外を気にしはじめる。
たぶん、そうするだろうなと思ったとおり、
川崎のずっと手前で席を立って、じっと窓をにらんで。

川崎には、いったい何があったんだろう。
そんなに遠くない熱海と川崎、その距離を、彼女は
いったいどれだけの間想ったのだろう。
最後に見た彼女は、プラットフォームから改札へと
続く階段を、上っていた。ただまっすぐに上だけを見て。
2006-02-07 23:41:27 / ふじさわ / Comment: 0 / Trackback: 0

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